ベーカー嚢腫(のうしゅ)
ベーカー嚢腫(のうしゅ)とは
MRI検査(T2矢状断像)
ベーカー嚢腫の原因
ベーカー嚢腫とは膝の裏にある関節液(滑液)という液体を含んだ滑液包が炎症を起こし膨らむことです。
膝の裏側には小さい滑液包が複数あり、過剰な摩擦や圧迫が加わると炎症が起こり痛みを生じます。
関節液の分泌量が多くなると、滑液包に過剰な関節液が溜ります。
関節液がたまる原因には、関節リウマチ、痛風、加齢による変形性膝関節症、ランニングなどによる膝の使い過ぎや、体重増加などがあります。
悪性の腫瘤ではありませんが、中年の女性に多く発症します。
*滑液包とは・・・膝は身体の中でも最も負担がかかりやすい関節です。このため、衝撃を吸収し摩擦を軽減する為に膝や関節の周囲には複数の「滑液包」という袋があり、内部には少量の液体(滑液)を含んでいます。
膝関節内の関節液が後方に押し出されて腫瘍になっている状態
ベーカー嚢腫(のうしゅ)の症状、好発年齢、好発部位
ベーカー嚢腫(のうしゅ)の症状
症状としては、膝裏の腫れ、違和感、不快感などがあります。痛みは強くなりにくい特徴があります。膝裏の腫れがゴルフボールくらいに大きくなると膝を曲げてしゃがむ、正座をする時に痛みを感じるなど可動域制限が生じます。腫れは自然に消えていきますが何らかの理由により関節液が急増し、嚢胞(滑液包)が破裂することがあります。破裂すると、嚢胞内の関節液が漏れ出し周囲の組織に炎症を生じさせ、急速に局所的な痛みや腫れを起こす場合があります。また、膝の裏側を通っている血管がベーカー嚢胞に圧迫され血管性静脈炎を発症させることもあります。
*嚢胞とは・・・軟部組織に形成された液体で満たされた袋状の病変です。
ベーカー嚢腫(のうしゅ)の検査
基本的に診察にて問診と視診、触診を行います。変形性関節症や関節リウマチ、半月板損傷などを併発していることがあり嚢腫の大きさや位置を正確に知る必要がある為、必要に応じて超音波検査やMRI検査を行う場合があります。
ベーカー嚢腫(のうしゅ)の治療
日常生活では膝に負担の掛かりにくい歩き方や姿勢を保つことが大切です。
治療として、一般的に保存療法と手術療法に分けられます。
保存的療法は基本的に症状が出ていなければ治療の必要はありません。痛みや腫れなどが強くなり日常生活に支障をきたすようなら、湿布や内服薬とともに注射器にて関節液を吸引し、経過観察を行っていきます。
吸引しても時間の経過と共に再び同じ症状が出現する事もあります。それ以外に、ベーカー嚢胞の形成を予防するためにステロイド薬を患部に注射することもあります。
手術療法は、保存的療法を行っても改善しない場合に嚢胞を摘出します。膝の裏側には重要な神経や血管が多数走っているため、また完全に取り除くことは難しく、摘出しても再発することがあるため手術には慎重な判断が必要です。
ベーカー嚢腫にお困りの方は、かかりつけの先生にご相談ください。